フランスにおいての過失による離婚

法制度の改正により離婚の手続きがだいぶ簡単になりましたが、それでもなかなかデリケートです。判例とともにフランスにおける過失による離婚の概要をご説明します。

 

  • 夫婦の貞操義務
  • 例えば、話し合って離婚の手続きをはじめ、お互いに別居し始めたので、もうお互いに制約されることなく自由だろうと思うとそうでもないのです。離婚の手続きが済むまでは夫婦の貞操を守る義務は存在します。

    もっともその辺は、判決も状況しだいで、離婚手続きを初めて数ヵ月後に羽を伸ばして新しい女性と「公式に」付き合い始めた夫を妻が訴えて、「和解による離婚」から「過失による離婚」とした時、裁判所はそれを認めました。(最高裁 8/03/2005 N°03-20235)

    こんな例もあります。

    海外赴任になった夫についてゆくのを拒否した妻が、話し合いで離婚することにした場合です。この場合は、話し合いで離婚の手続きをはじめ、夫は海外で生活していたのですが、この手続きを始めてから5年たった時点で、夫が海外であった女性と同棲を始めたときに、妻が「話し合いによる離婚」から「過失による離婚」に変更して訴えなおした時は、離婚手続き後別居を始めてからの時の長さは夫婦の貞操義務を検討する時の考慮の対象になるとして、この妻の訴えを退けました。(リヨンの控訴審 5/02/2008 N°07-00941)

     

  • 夫婦間の暴力
  • 乱暴を働かれた場合は原則として、離婚の正当な理由となり損害賠償請求が出来ます。

    もっとも、週刊誌やメディアを騒がしているような何百万・何千万の損害賠償を夢見ているとあてが外れます。

    夫に殴られた妻がちゃっかり病院で診断書を作ってもらっておいて離婚と損害賠償を求めて訴えた件では、長い裁判の後(最高裁まで行きました)、離婚については「過失による離婚」が認められましたが、損害賠償については2500ユーロでした。(パリ最高裁 7/05/2008 N°07-12986)

    この「暴力」というのは物理的・肉体的なものばかりではなくて、言葉による暴力も含まれます。

    また夫婦はお互いに貞操義務があるといっても、相手が拒否しているのに無理に性行為を強要すれば、それも暴力になります。

    酒癖の悪い夫が酒を飲むたびに妻を侮辱し愚痴をこぼし続けた件では、「夫の一方的な過失」ということで離婚が成立しています。

    ここで注意しておくべきことは、こういった暴力や不貞などの事件があったときにいったん和解すると、その事実は消滅しますから、その後その和解した事実を元に相手の過失ということで離婚を請求することは認められません。

    もっとも、そういった暴力や不貞が和解したあとで再び繰り返された時、それを元に離婚の訴えをすれば、この和解して消滅した事実も裁判の時には考慮の対象にされます。

    ですから、何度も暴力を振るった夫がいったん和解してから再び暴力を振るい始めたので妻が今度は離婚に踏み切った時、夫は「和解前の暴力は消滅したのだから、俺は一回殴っただけ」といっても通用しません。

    精神的な虐待や侮辱あるいは一方的な権威主義や威圧が繰り返されるのも離婚の正当な理由となります。

    夫が宗教にこって家庭内でもその宗教の規律を家族に強要して押し付けたりするのも、家庭の正常な生活を乱すものとして正当な離婚の理由として認めています。(最高裁 19/06/2007 N°05-18735)

    一般に離婚する場合、補償手当てと扶養手当以外には金銭的な利点がないために、金銭的に有利になろうとして、相手の過失をあげつらうことが多いのですが、これは「重大な過失」でないと、意味がありません。例えば意見や性格の不一致程度では「相手の重大な過失」とはなりません。

     

  • 家庭の放棄
  • 家庭を放棄することは重大なる過失です。従って職についていない妻が夫の転勤についてゆくことを拒否すれば重大なる過失となります。

    この「家庭の放棄」というのもケースバイケースで判断されます。

    こんな例もあります。

    夫が夫婦喧嘩の後怒って妻の持ち物を家の外に放り出して一緒に妻を家の外に放り出しました。その後妻が帰ってこないので、夫は「家庭の放棄」ということで「重大なる過失」として離婚の請求をしました。裁判所は夫の請求する「重大なる過失」を認めませんでした。妻の「重大なる過失」の原因を作ったのは夫自身だからです。

    逆に、伴侶の暴力は家庭を捨てて外に出るための正当な理由になります。ただし、この場合も、身の安全が脅かされるような暴力の場合で、単に威圧的で口汚くののしる程度では、家を出る正当な理由とは認めてくれないことが多いようです。

    2005年1月1日より、伴侶の暴力がひどい場合には「家を出る正当な理由」があるばかりではなくて、判事に申し立ててその暴力的な伴侶を家から追いだす命令を下してもらうことも可能になりました。

    裁判というと当然証拠ということが問題になってきますが、子供が親に反して証言に立つことは認められていません。

    こんな例があります。

    おばあちゃんが「子供がこう言っていました」と父親に不利な証言をし、それが元で父親に不利な判決が出た時、その後の最高裁での審理では、子供の親に対する証言は間接的であっても無効であるとされました。(最高裁 3/11/2004 N°03-19079)

    また、こんな例もあります。

    夫が子供に自分の浮気について語った手紙を証拠に妻が「夫の不貞」ということで離婚請求をした時、それは子供の父親に対する証言を根拠にしているということで証拠としては無効とされました。(最高裁 5/07/2001 N°99-15244)

    そのほかの証拠については、不法・不当に 入手したものでない限り原則として有効です。

     

    ※情報は掲載時点のものです。また、あくまで一般論であり、背景の異なる個別のケースでは該当しない場合もあります。最新の情報やお客様のケースにあった情報につきましてはお問合せください。

     


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