フランスにおけるカップルの間の金銭・資産管理の注意点II

カップルという名で、以下ではPACS (Pacte civil de solidarité) 、結婚、同棲の形で家庭を形成しているカップルが生活を共にしてゆく場合に、その資産管理について注意することを説明して行きます。

 

  • 結婚、PACS、同棲で生まれる違い
  • 出会い、カップルとなり、子供が出来、共同で家を買い、そして離婚あるいは死別で分かれるというのがカップルの誕生から消滅までの歴史です。

    例えば、通常の資産管理の枠内ですと、資産分離の協約で結婚したカップルと資産分離の協約で出来たPACSのカップルは相似点がたくさんあります。 ところが、伴侶の一方が死亡した場合には、この二つの相似したカップルの間に大きな差が出来てきます。

    PACSで結ばれているカップルの場合には、残された人は、遺産相続の点で結婚して残された人よりも法的には十分な保護がされていません。

     

  • さまざまなケースと注意点
  • (1)ローンの支払い

    カップルが出来て仲良く日常の出費やら不動産購入のローンを適当に分担して支払うと言うことは、時として面倒な問題を引き起 こします。

    例えば、二人で不動産を購入する時に、片方はフリーのアーティストでもう一方はサラリーマンだと言うので、サラリーマンの人の 名前で、不動産のローンを組んで、もう一方は、ローンの支払い分に当たる分だけその他の日常の支払いをするというような取り 決めはよくあることです。 そして何かの都合で分かれることになったときに、この不動産の所有権が問題になってきます。

    もちろん書面上は不動産はローンを支払っている人のものです。日常の支払い等ローンの半分に当たるものは、自分は負担していたと言って、その証拠となる領収書等をきちんと何年も保存していれば、何とかなるかと言うとそれも怪しいのです。

    結婚あるいはPACSの場合には、家庭の出費はそれぞれが支払い能力に応じて分担することになっていますから、証拠さえあれ ば、ローンの支払いと日常の出費を分担していたと言うことは、裁判所での議論になります。

    ところが同棲の場合には、この家庭の出費をそれぞれの支払い能力に応じてするという義務がないのです。したがって、そういう形の出費の分担をしたという議論はそのままではまず受け付けてくれません。 それどころか、「君は相手の買った家に住まわせてもらっていたのだから」などといって、少々日常の出費を支払っても当たり前 ではないかなどといわれかねません。

    ですから、カップルが出来て幸せな時に別れるときのことを考えると言うのは縁起のよくないことかもしれませんが、分かれるときに面倒な問題がおこるのを避けるためには、こういったことをきちんと書面で決めておくべきです。

     

    (2)資産共有

    同棲していたり資産分離の制度で結婚している場合には、たとえば、銀行の口座を共同名義で開いた場合に、その口座に入って いるお金に関しては、半分は自分の権利があると思って安心していると、そうではありません。 相手が、その口座に入金していたのは自分一人であると証明すれば、あなたはその口座のお金に関して、何の権利もありませ ん。

    逆に資産共有の制度で結婚した場合に、自分が結婚以前から持っていた不動産あるいは相続で得た不動産(これは自分だけの ものです)を、自分名義の銀行口座へ入れた場合に、相手がその口座に入っているお金は、結婚後に得たお金だから、自分にも権利があるといわれた場合に、その口座のお金がきちんと自分所有の不動産の売買から来たものであると証明できないと問題になります。ちょうど不動産を売ったころに入金しているとか、金額が似ているなどというだけでは、必ずしも証拠とはなりません。問題が起こりそうな場合には、カップルの間で、銀行に入金するときに、自分の不動産の売買によるお金を入金することを、証明書 として作っておくことです。

     

    (3)不動産購入と民事会社

    カップルで家を買う場合に民事会社を作ることが流行っていますがこれも必ずしも得策ではありません。 遺産問題が起こった時に子供や親の遺産留保分等に対して、夫婦の間の権利を保護できるという考え方があるからですが、必ずしもそうではないのです。

    たとえば、同棲しているときに民事会社を作って家を買ったとします。その後二人は結婚して、幸福に人生を送り、片方が先だった時に、夫婦の名前で買った家の場合には、残った伴侶はその家に住んでいる権利がありますが、民事会社の名前になっていると、この当然と思える権利が働きません。

    運悪く離婚することになった場合にも、二人で買った家を分割して分けて離婚することも、二人の名義になっているほうがはるかに簡単です。 民事会社を解散する手続きのほうが厄介です。ましてや、半々の持ち分で作った民事会社の場合には意見が衝突したら、動きが取れなくなりますから、いやでも裁判沙汰にせざるを得ません。

     

    (4)不動産権利書

    カップルで家を買う場合に、相手を保護するために、ローンの返済などの事実にそぐわない不動産権利書を作ることもおススメいたしません。

    たとえば、 女性の将来を保護する目的で権利書は半々ということで作り、実際には、男性がローンの返済をする場合などです。仲が良い場 合には問題がないのですが、これが離婚になった場合に、男性が、将来女性が自分のローンの返済分を払い戻してくれるという約束の下で自分はローンの返済を今まで肩代わりしてきたのだといわれると、問題が起こって来ます。女性が、「いや、あれは贈与ということで彼がローンを払ってくれていたのだ」と裁判所で主張しても必ずしも認めてくれません。

    またこうして事実にそぐわない権利書ですと、税務署から偽装した贈与であるとして問題にされることもあります。もちろん資産共有の制度で結婚している場合には、この問題は起こりません。

     

    (5)PACSと相続問題

    人生観からか誤解からか、PACSを結んでいつまでたっても結婚しないでいると、病気や老いが来た時に、伴侶をきちんと保護できません。 PACSに関しても相続税に関しては残された伴侶が保護されるようになりましたが、それは相続分がある場合で、PACSの場合 には、遺言できちんと決めておかないと法的にはPACSの伴侶は現在でも法的には相続分がありません。

    遺言をする場合には、子供たちの遺産留保分を除いた部分について遺言で自由に決められます。また、2006年の法改正以来、親には遺産留保分はなくなりました。ただし、返還の権利(親が子供に資産を与えた場合、子供が先に死んだ場合には親はその資産の返還を求めることができます)は現在でも有効です。

    夫婦の場合には、伴侶がなくなった場合には、老齢年金の譲渡がなされますが、PACSの場合には、この譲渡の権利はありません。 PACSのカップルが男性が重病になって、それらのことに気づいて、急遽結婚するということもありますが、これは男性が公務員の時などには問題が起こります。

    公務員の場合には、この年金の譲渡の権利があるためには、4年以上の結婚生活があるか、あるいは定年退職する前に、2年以上の結婚生活をしていることが必要です。

    また再婚の場合にも、問題が出てきます。この場合には年金の譲渡は、かっての伴侶との間で分割されます。そして、その場合には、結婚期間に比例して分割されますから、PACSの期間は考慮されませんから、たとえば20年間PACSできて、結婚したのは3年前だなどという場合には、この年金の譲渡の分割の時に大変不利になります。

     

    (6)結婚契約

    結婚契約をせずに結婚すると、問題が出てくることがあります。

    まず結婚契約ですが、これは大きく分けて次の3つになります。    

    *Régime de séparation de biens・・・これは結婚後も結婚前と同じく、自分の資産は自分に属するという資産に関しては結婚前となんら変わらない制度です。    

    *Communauté réduite aux acquêts・・・これは結婚前の資産についてはそのままそれぞれが独立して所有しますが、結婚後に得た資産については二人の共同所有となります。    

    *Communauté universelle ・・・これは結婚前から持っていた資産も、結婚後得た資産もすべて共同所有とするものです。

    上記の原則に従って細部は自分たちで細かい契約をすることができます。そして結婚契約をせずに結婚した時は、原則として、La commnunauté réduite aux acquêtsであるものとみなされます。

    さて、結婚契約をせずに幸せな人生を送り年を取ってからあるいは重大な病などで自分の死後の伴侶の生活を保障しようとして Communauté universelle の結婚契約をしておこうとすると、当然子供たちに不利になりますから、子供たちが反対するということも 起こります。子供たちが裁判を起こせば問題が起こり、せっかく自分の大切な伴侶を保護するために結婚契約を結ぼうとしてもで きなくなることがあります。

     

    (7)不動産と遺産相続

    遺産相続の問題などを考えて早めに子供たちに不動産の空所有権などを譲ってしまうのも問題が起こることがあります。用益権が あるから死ぬまで住んでいられるからと安心していますと、伴侶に先立たれたので自分は、あるいは二人で看護付きの老人ホー ムへ入ろうとするときなどにお金が必要になっても、その不動産は売ることもできませんし、抵当として使うこともできません。

     

    こうした将来さまざまに起こりうるケース、問題をよく話し合い、カップルの在り方を考えてみましょう。

     

    ※情報は掲載時点のものです。また、あくまで一般論であり、背景の異なる個別のケースでは該当しない場合もあります。最新の情報やお客様のケースにあった情報につきましてはお問合せください。

     


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