フランスにおける家賃滞納者の強制退去

フランスにおける家賃滞納者の強制退去の流れをご説明します。以下の過程は、強制退去するにはという形で書きますが、滞納して困っている人は、相手はこういう手順で来るのだなということが分かりますから、それを参考にして対策を立ててください。

 

  • 強制退去までの流れ
  • 強制退去ということになりますと、我々先進国では家主が実力行使するわけには行きませんから裁判所の許可を取ることになります。

    そのときの基本となるのはいわゆる2009年のBOUTINの法、正確には、loi n°2009-323 du 25-3-09 de mobilisation pour le logement et la lutte contre l'exclusion です。

    普通は賃貸契約書に家賃の滞納等の重大な義務を怠った時は自動的に契約が解除されるという clause résolutoire が書いてあるものですが、これがないと、以下の手続きがかなり変わってきます。

    この clause résolutoire が書いてないことは稀ですのでまずその場合を簡単に説明しておきます。

     

    clause résolutoire がない場合

    この条項がない場合には、家賃の滞納が増えてきても直接には執達吏 (Huissier) に支払い命令 (commandement de payer) を交付させることができません。 何度か催促の手紙を出すなりしてから、それでも効果がなければ、配達証明書月の書留で催促をします。その後支払いがなければ、2週間から1ヶ月待ってから、Tribunal d'Instance に訴えます。しかし判事は契約書に clause résolutoire がないと、必ずしも契約書の解約を認めないばかりか、強制退去もすぐに認めてくれるかどうか分かりません。 ですから形式的なことのようですが、この clause résolutoire が契約書の中にあるかないかは大きな違いをもたらします。

    次に clause résolutoire の条項がある場合の手順を説明します。

     

    clause résolutoire がある場合

    家賃が滞納されてもうこれはダメだという状況になったら、執達吏 (Huissier) に下記の書類を持っていって借家人に commandement de payer を出してもらいます。

    (1)アパートの契約書とその補足

    (2)保証人がいる場合にはその書類

    (3)滞納している家賃の明細(家賃と諸雑費は区別すること)

    これを基にして huissier は借家人に commendement de payer を通達します。同時に保証人がいれば15日以内に保証人にも出来事を通知します。

    Huissier はアパートのある地区の Préfecture に借家人に対して commendement de payer が通達された旨を通知します。 この通達後、家具なしのアパートの場合には2ヶ月、家具つきのアパートの場合には1ヶ月待って、なんら支払いがなされない場合には、裁判所へ訴えます。 この場合に裁判所は滞納されている家賃の金額に関わらず Tribunal d'Instance です。緊急を要する場合には、juge des référés に緊急審理を要求します。 Huissier はこの裁判所への召喚を地区の préfecture へ通知します。 Préfecture は独自に事情調査を開始します。 裁判所は、借家人の強制退去あるいは借家人に支払いの猶予期間を与えるなどの判決をします。この場合に、裁判所は強制退去の判決を下すと同時に2年以内の制限の元で借家人に支払猶予期限を与えることが出来ます(そしてたいていそうなります)。 この場合には強制退去命令はこの猶予期間中は中断され、またこの期間中に借家人が完済すれば契約書の自動的な解約も消去されて普通の契約が再開されます。

    返済の猶予期間なしで強制退去の判決が下された時は、借家人はアパートを引き渡すまでの猶予期間を要求できます。この猶予期間は1ヶ月から1年以内となっています。この猶予期間は判事の判断で何回でも更新することが出来ます。判事は借家人が本当に困っているのかあるいはズルで払わないのかなどを判断して判決します。それには勿論借家人の収入や年齢や健康状態などが考慮の対象になります。この猶予期間は、この裁判の時ではなくていったん判決が出てからも juge de l'exécution に要求することも出来ます。

    さて、判決が出ると huissier は借家人に判決を通達します。この判決が通達された時点から強制退去あるいは上告などに対する期間の時間がスタートします。 いったん判決が通達されると、次には退去命令が通達されます。この退去命令には、その根拠となる裁判所の判決、猶予期間を要求する場合の裁判所あるいは不服申し立てする場合の裁判所、アパートを明け渡さなければいけない日付、その日付からは警察権力の力を借りての強制退去もありうるということが言及されています。 この通達は同時に受領証付きの書留で préfecture に通知されます。 Préfecture はこの不法居住者となった借家人のために住居を探す手続きを開始します。 借家人がなんら猶予期間を与えられなくて強制退去の判決が出た場合でも、huissier が退去命令を通達してから2ヶ月以内にアパートを引き渡せばよいことになっています。この2ヶ月間は何も出来ないということです。借家人が高齢であるとか病であるということですと、判事は比較的簡単にこの期間をさらに3ヶ月延ばします。

    ここで注意しなくてはいけないのは、こんなこともあります。 アパートをかりる時は独身だった人がその後結婚して同じアパートに済んでいたとします。普通は一々契約書の書き換えをしませんし、大家さんに自分の結婚を通知することもしません。したがって何も知らない大家さんは、契約書にある夫を相手取って強制退去の判決を得たとします。 この場合に、結婚した場合には自動的に奥さんも賃貸契約の契約者となりますから、奥さんは強制退去命令が出ていないので、そのまま住んでいることができます。奥さんを追い出すために再び裁判をしなくてはならなくなります。ですから裁判を起こす前に管理人に確かめるなどして、結婚したという場合には夫婦を相手取って裁判を起こすことが必要です。

    さて以上のような手続きの後も借家人が立ち退くことなく住み続けている場合には、huissier は場合によっては鍵屋を同伴して借家人の退去を試みます。この場合には大家は立ち会ってはいけないことになっています。

    Huissier は6時から21時の間しか強制退去の行使をしてはいけないことになっていますが、この日時を借家人に告げる義務はありません。 Huissier が現れた時にすでに借家人がいなくなっていた場合や借家人が素直に立ち退いた場合にはそれで一件落着です。この場合には huissier は鍵を取り替えさせて、家具等が残っている場合にはそれらを倉庫へ保管するようにさせます。あるいは借家人の指定したところへ保管します。借家人は1ヶ月以内に引き取ります。これらの運送や保管の費用は借家人の負担です。

    Huissier はこれらの事実を調書に作成します。 1ヶ月たっても家具等の引取りのない場合には、juge de l'exécution がそれらをどうするかを決定します。価値のありそうなものは競売にかけられて滞納されている家賃の支払いにあてます。あまればその金額は借家人に返金されます。その他のものは放棄されたものとして廃棄されるか慈善団体等に寄付されます。

    Huissier の出現にもかまわずに借家人が住み続けている場合には huissier は退去させることの困難を述べて警察権力に要請することになります。これは、préfecture を通して依頼されますが、必ずしも簡単に応じてはくれません。 この要請後2ヶ月以内に préfecture は返事をすることになっていますが、2ヶ月以内に返事のない場合には、自動的に却下されたとみなされます。 許可が出た場合には地区の警察署と強制退去の実行のためにアポイントが取られます。

    却下された場合には huissier はその事実を共和国検事 (procureur de la République) に通知します。この時点より、大家さんは国の責任を問題にすることが出来ます。したがって国を相手に損害賠償請求が出来ます。 この手続きは、即裁判には出来ずに、まず上級の役所へ不服の申し立てをします。この場合には内務省 (ministère de l'Intérieur) です。内務省は4ヶ月以内に返事をすることになっています。ここでも却下された場合には、2ヶ月以内に行政裁判所へ訴えます。行政裁判所が préfecture に強制退去に手を貸すようにと言う命令を出すことは稀ですから、いくらかの賠償金で話は終わりです。

    この強制退去も冬の間(11月1日から3月15日の間)には出来ないことになっています。ただしこの冬の強制退去が出来ない期間も、建物が破損されていて危険であるという場合には当てはまりませんし、あるいは最初から賃貸契約なしで不法住居にしていた場合には適用されません。

     

    ※情報は掲載時点のものです。また、あくまで一般論であり、背景の異なる個別のケースでは該当しない場合もあります。最新の情報やお客様のケースにあった情報につきましてはお問合せください。

     


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