日本における署名・捺印の概要

パリで仕事をしている人の中には学生時代にフランスへ留学してそのままフランスで仕事を始めた人もかなりいます。中には日本で働く機会がなかったために、日本で働いていたら常識のような印鑑の使い方に戸惑っている人もかなりいますので、以下に簡単に必要なことを説明します。(日本とのビジネスではこの印鑑の使い方は知っている必要があります!)

 

日本で学生時代を過してそのまま留学してからフランスで仕事を始めた場合、日本では親が何でもしてくれましたから、書類に印鑑を押すことも少なかったと思います。そしてフランスでは、当然すべての書類がサイン一つで済んでしまいます。そうなると印鑑とはなんだ?ということになってきますね。印鑑など文具屋の店先でいくらでも売っていますから、あまり証明としては役に立たないような気がしますが、日本の文化文明の中では、印鑑の方がサインよりも重みがあるといってよいでしょう。

 

署名・捺印について

まず、書類や契約書にする場合、主に次の3つがあります。

(1)署名・・・これは文字通り署名します。ただし日本の場合外国のように何が書いてあるかわからない署名をすることは稀でたいていは自分の名前が分かるように書きます。

(2)記名押印・・・これは印を押す人の名前を何らかの方法で書いてから印を押します。従って名前を印刷したり他人が書いたりしてみかまいません。その上この押印という時は、印鑑が本人の ものであろうと他人のものであろうと名前が一致していようといなくとも、本人が押印する意思で押せば押印となります。

(3)署名押印 ・・・これは署名した上で押印します。 日本の社会ではサインよりも押印を重視する傾向がありますから、契約等には注意してください。例えば、フランスでしたら小切手はサインだけですが、日本の場合小切手を振り出す時は、サインでは原則として無効です。 一般的には商事行為では、署名=記名捺印と考えてよいと思います。

日本の社会習慣からすると押印は常にもらっておいたほうが安全です。契約書にサインがあっても、押印がなかったために、あとであの文書は下書きだと思っていたから押印しなかったのだ、といわれて言い訳されるケースがあります。

契約の時は当事者同士がお互いに面前で住所指名を自筆で書いて更に押印するというのが一番確実といえます。 また、印鑑を持ち合わせていなくて拇印を押すことがありますが、これなどは本人かどうかを確認するという意味では一番良い方法なはずですが、この拇印も署名押印する時の押印としての効果は認められていません。 手形・小切手の振り出しも原則として拇印では無効です。 もっとも手形・小切手の振り出しとしては無効でも、商行為あるいは契約行為で相手方を判別でき、詐欺その他で戦えますから、その意味では全く役に立たないというわけではありません。

後は郵便小包み等を受け取る時に、名前やイニシャルなどを書いてさっとまるで囲んだりしますが、この「書き判」も押印としての効果はありません。

 最近は家庭でもカラー印刷が出来るのが当たり前になり、領収書等も記名押印を印刷したものがありますが、この場合記名は出来ていても押印としては有効ではありません。

 

次に普段私達がハンコといっているものは、印、判、印鑑など色々な呼び名で使っています。正式には印章といいますが内容が分かっていれば問題はないので、この説明ではハンコということにします。

 

印影・印鑑

さて、このハンコを紙の上に押したその跡を「印影」といいます。そしてこの印影を比較対照できるようにあらかじめ官公庁・銀行・取引先などに届け出ておくものを「印鑑」といいます。 銀行からお金を引き出すときや小切手を振り出すときにハンコを押しますが、この印影が印鑑と同じであればたとえ盗まれた印章でも銀行には責任がなくなります。

 

実印

次に、市区町村に登録がしてあって、印鑑証明書の交付を受けられるハンコを実印といいます。それ以外のものはすべて認印です。認印はいくつあってもかまいませんが、実印は一人一個に限られています。そして印鑑証明書は原則として3ヶ月以内のものを使うことになっています。 あとは使用目的により、銀行に印鑑が届け出てあるハンコを銀行印といったりします。

 

契印

次に契印ですが、これは文書が2枚以上にわたる場合、それらが一体の文書であり、活順序が守られていることを明確にするために、各ページにまたがって押印する場合これを契印といいます。このときに使うハンコはその文書の末尾に署名押印したものと同じものを使います。また署名押印したものが複数いる場合は、全員が契印するのが原則ですが、誰かが代表して契印してもよいことになっています。

 

割印

割印は2つ以上の独立した文書について、それらの文書の同一性や関連性を示すために、それらの文書にまたがって押印します。例えば領収書とその控えにまたがって押印する場合などです。あるいは契約書を2通以上作ったときそれが同時に作られたもので同じ内容であることを確認するために割印します。この割印は契印と違い、署名印と同じである必要はありません。

 

字句の訂正

契約書や委任状などで字句を訂正した時は、その訂正箇所に訂正をすると同時に署名押印したのと同じハンコで押印します。そして同時に欄外に、「壱字訂正」「四字加入」「四字削除」等と書いて同じく押印します。この場合も署名押印したものが複数いる場合は全員が押印します。 この訂正をした時に押印してもらう煩瑣を避けるために、欄外の押印だけしておいてもらうことがありますが、これはよほどの信頼関係がある場合以外はしないほうがよいでしょう。最も、弁護士の委任状などは、弁護士のほうから、捨て印しておいてくれという人がかなりいますが・・・

 

消印

契約書や領収書に収入印紙を添付する必要がある場合、収入印紙と台紙にまたがって押印することが必要です。これは収入印紙を再使用することを防ぐために義務付けられています。忘れると、印紙税額の2倍の過怠税をとられます。この押印のことを消印といいます。この押印は署名押印のハンコと同じものである必要はありません。また署名者全員で押印する必要もありません。 ハンコの持ち合わせがなければ、印紙の再使用を防ぐためにボールペンなどで消しこみをするだけでも大丈夫です。

 

止め印

契約書等の末尾に余白が生じた時は、あとで勝手な書き込みをされないように、末尾に押印しておくことがあります。これを止め印といいます。ボールペン等で以下余白と書いておいてもかまいません。

 

印鑑登録・印鑑証明

実印の印鑑登録の仕方ですが、住民登録をしてある市町村役場に登録証と思う印鑑を持参します。このときに本人であることを確認できるようにパスポートや免許証等を持ってゆきます。 東京都の場合は印鑑登録が終了すると印鑑登録証というカードを交付してくれます。このカードを持参すれば、次回からは委任状がなくても代理人で印鑑登録証明書を交付してもらえます。 このカードには番号しか書いてありません。印鑑証明書を取る時に申込書に登録者の姓名・住所・生年月日を書きますから、何も知らない第三者が拾っても悪用されることはまずありません。 登録する場合は、印象は、姓・名・姓名のいずれかをあらわしている物に限ります。ですから通称やペンネームはだめです。またローマ字も受け付けてくれません。そのほか、職業・本籍地・生年月日などを併記することも出来ません。 次に大きさは、8ミリ四方の正方形に収まってしまうもの、あるいは20ミリ四方に収まらないものは受け付けてくれません。大きすぎてもだめ、小さすぎてもだめということになります。勿論印影が不鮮明で判読できないものはだめ。外枠がないものや文字が消えているものもだめです。 登録した印鑑を変える人はあまりいませんが、紛失したり破損したりあるいはこの印章はどうもゲンが悪いといって替えたくなることもあると思います。 この場合には、まず印鑑登録廃止申請書を出して登録してある印鑑登録を廃止して、次に改めて新しい印鑑で印鑑登録をします。 印鑑登録証をなくした場合は悪用されるのを避けるために、やはりいったん印鑑登録を廃止して新しく印鑑登録をしたほうが安全です。 単に印鑑登録証を破損した場合には、印鑑登録証引き換え交付書に所定に徐行を記入して申請すれば再交付してくれます。 印鑑証明書は本人以外は殆ど入手不可能という考え方にたっていますから印鑑証明書があると本人の同一性が確認されたものとみなされてしまいますから、この印鑑証明書の取り扱いには十分に注意することが必要です。 外国人相手の場合は、彼らは一般に印鑑証明などを持っていませんが(彼らの場合も外国人登録法による外国人登録をしていれば印鑑登録が出来ます)この場合には、在日外国公館がサイン証明書を出してくれます。

 

代表者印、社印、銀行印、役職印

会社の場合にも個人の実印に当たるものがあります。会社の設立の時に法務局に届けますが、そのときに会社の印鑑を届け出ることになっています。これが会社の実印にあたり、代表者印といいます。 そのほか個人の認印と同じように、会社では、社印、銀行印、役職者印があります。 代表者印についても、大きさの制限があって、1センチの正方形以上の大きさで3センチの正方形以下の大きさとなっています。書いてある文字については実印と違い何でもかまいません。代表者名や会社名さえ入っていなくてもかまいません。 会社名の入っている印章が社印です。請求書や領収書など日常業務に使います。通常これが大きくて立派なため会社を代表する印のように思えますが、これはあくまでも認印、会社の実印は代表者印だけです。 銀行と取引をするときに銀行に届け出る印が銀行印です。 役職者印は、課長、部長、支店長などの役職名の入った印です。

少し印章の話から脱線しますが、署名押印した文書の日付を確定しておきたい時は、公証人役場へ行けば、確定日付のスタンプを押してくれます。 署名押印で気をつけないといけないのは、例えば借用証書のとき、借り手が個人の場合でも貸し手に安心感を与えるために、 東京都杉並区永福町5番地 四菱商事社長 山田太郎 等と書くと、会社が借りたのか個人が借りたのかあいまいになります。勿論会社が大会社の場合は会社のほうが安全ということもありますが、個人が借りたのに、その後小さな会社がつぶれてしまえば、会社が借りたのだということで責任なしなどといわれて困ることもあります。あいまいな表現は避けるべきです。

会社と契約する時に気をつけないといけないのは、代表権のある人の署名押印をさせるということです。会社の場合には共同代表ということがあって、この場合は共同代表の全員がいないと代表行為になりませんので注意が必要です。 従って商業登記簿で確認しておく必要があります。 また、商法では「ある種類、または、特定の事項の委任を受けた使用人はその事項に関しては代理権があるものとみなす」となっていますから、この場合には代表取締役ではなくても会社を代理して契約する権限があるといえます。


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