フランスにおける急速審理 (Procédure de référé) について

プライベートでもビジネスでも、話し合いで解決できずに裁判によらなければいけない場合が出てきます。これは役所相手に各種の許可を取る場合でも同じことです。

しかし、通常の裁判の手続きですと、大変時間がかかります。役所の許可にせよ、あるいは会社の経営管理に関することにせよ、通常の裁判を待っていると手遅れになってしまうことがあります。

そんな時の手続きとして、「急速審理」の制度があります。

 

  • 急速審理 (Procédure de référé) とは?
  • 急速審理とは、何か問題が起こったとき、通常の審理を待っていると問題が大きな損害を引き起こす恐れがあるときには、管轄の裁判所の裁判長に臨時的にその問題が被害を引き起こすのを食い止めるための命令を下すように要求するものです。

    これは弁護士を通さずにも出来ますが、場合によってはその日のうちに(たとえそれが休日であっても)命令を請願することも出来ますから―審理が裁判官の自宅で行われることもあります―、かなり技術的ですので弁護士の補佐を求めたほうが良いでしょう。

    こうして得られた命令を相手方に伝えて実行させます。それが補償前渡し金を支払えというものでしたら、相手方が支払わなければ、差し押さえが出来ます。

     

  • 急速審理と裁判長に対する請願の違い
  • ここで少しニュアンスを述べておきます。

    急速審理と裁判長に対する請願による命令とは別です。やはり急を要することについては、裁判長に対する請願による命令を出してもらうという手もあります。急速審理と本質的に同じですが、こちらの場合には、自分のほうが一方的に裁判長に請願して命令を出してもらいますから、相手方は召喚されません。したがって、こちらの請願は相当明らかで急を要し、相手方がその仮の請求に絶対的な不服の申し立てをしないことが必要です。

     次に急速審理の場合には、それによる決定で命令されることは、即行使されます。したがって相手方がその命令に対して、不服の申し立てをして上訴してもそれは命令の執行を停止する効果はありません。

    この急速審理の決定はこのように迅速で効果的ですが、あくまでも仮の決定で、後日に行われる本審理の結果に影響を与えるものではありません。あくまでも放置しておくと大きな被害を引き起こすために仮の命令を出してもらうということで、本格的な問題の審理はなされません。

     

  • 急速審理を請求できる条件
  • この急速審理を請求できるのは原則として次の4つの場合です 。

    (1)緊急の場合 

    とにかく緊急の場合には、本審理を担当する裁判所の裁判長に急速審理を要求できます。果たして緊急を要することかどうかは裁判官が判断しますから、必ずしも受け入れてもらえるかどうかは分かりません。

    例えば仮の命令がない場合には、会社や組織の運営が麻痺する場合です。あるいは仮の命令がない場合には、時間の流れ上会社や組織が解散に至る場合です。

    それに反して、緊急の場合でも、この急速審理の要求をせずにほっておいて、土壇場になって急速審理を要求すると却下されることがあります。  

    また、その要求される命令が相手方の断固たる反対にあう場合には、請願された仮の命令は出ません。

    要求される仮の命令が、裁判官にとって、明瞭に必要と思われるものであることが必要です。

    例えば、更新時になった契約書に対する問題の場合などは明らかに急を要します。

    それに反して、売られた商品の所有権がいつ買い手に移るかという問題については、裁判所は急速審理の請願を退けました。

    あるいは契約書の有効性に関する審理についても急速審理の請願が却下されています。  

     

    これらはあくまでも原則で、ケースバイケースで裁判所がどういう反応をするかはそれほどはっきりとはしていません。

    例えば、相手方の断固たる異議があるにもかかわらず急速審理を受理した場合もあります。

    勿論この場合には、急速審理では、あくまでも急を要する仮の命令が出されるだけで、その場合には急を要するという点が主眼で、その後の本審理に影響を与えるものではありません。

    例えば、何かの差し押さえがあった場合、相手方の断固たる異議がある場合でも、その際押さえが、本審理を待っている間に差し押さえられた方に大きな被害を与える場合には、差し押さえの停止を急速審理するということがあります。

    あるいは銀行による不当な銀行取引停止に対する急速審理です。

    管財人の命名や財産保全処分についても急速審理が普通は受理されます。

     

    (2)被害が目の前に迫っている場合や問題が目の前に明らかな場合

     被害が目の前に迫っている場合には、裁判長に対して、保全のための命令あるいは元通りに仮に戻す命令を要求します。あるいは不法な問題が明白な場合には、それを停止させる仮の命令を要求します。

    この場合には、相手方の断固たる異議がある場合でも、不法な問題が目前の被害を引き起こすことが明白な場合には、急速審理による仮の命令を請求できますこれは役所の決定に対しても適用されます。

    例えば、誰かの姓名を不当にインターネットのドメイン・ネームとして第三者が使った場合とか、会社名を第三者が勝手に使った場合などです。

    嘘の宣伝などもこの場合に入ります。

     あるいは県庁の決定に反して店を開こうとしている商店に禁止命令を出す場合もそうです。

    あるいは、資格がないのに職業行為をしようとしているものに対する禁止などもそうです。

    契約を不当に解除した場合にその契約の不当解除が大きな被害を与えることが明白な場合にも急速審理で契約の仮の続行を命令してもらいます。

    不法であることが明らかな場合には、被害が深刻でなくとも急速審理を受理してくれることが多いといえましょう。

     

    (3)補償仮払いを得る場合

    補償仮払いを得るためにも急速審理は受理されます。 債権が確定していない場合にも債権者は補償仮払いを急速審理で要求できます。この場合には、この債権が相手方によって断固たる異議をされないことが必要です。

     例えば欠陥商品に対してはその払い戻しは、断固たる異議の対象になるとは裁判所は判断しません。また払われていない請求書の支払いについても、裁判所は相手方の断固たる異議があるとは考えません。 あるいは返済プランの決められた借金についても同じことです。裁判所はその後に相手方が断固たる異議をいえるとは考えません。この場合には債務者が、異議を言うためには明白な証拠を出すことを要求されます。 あるいは契約で決められたことの実行を急速審理で仮に請求することも出来ます。 これらの場合における補償仮払いの金額は、一部から全額に至るまでケースバイケースです。 債権者は目前に迫った被害のある緊急の場合でなくとも、補償仮払いの急速審理を要求できます。なぜならば、裁判官は債権の回収は常に緊急を要すると原則的にに考えますから。

     

    (4)問題となる契約書で急速審理が要請されている場合    

    法で決められている場合とは別に、契約の当事者たちが独自に急速審理を決めている場合にも急速審理がなされます。

    例えば、自動契約解除条項がある場合です。契約解除条項というのは、契約者の一方が契約上の義務を果たさなかった場合に自動的に契約を解除するというものです。あるいはこれこれの事情が起こった場合には自動的に契約を解除するというものです。

    例えば、アパートの賃貸契約にはたいていこの自動契約解除条項がついています。    

    この自動契約解除条項もたいていの場合には、前もって支払い命令や実効命令を出してから、その命令が実行されなかった場合という条件がついている場合が多いといえましょう。この場合にも、相手方が異議を唱えなければ、自動的に解除される場合と、裁判所が実効命令が実行されなかったことを確定することが必要という条件付の場合があります。後者の場合には、この裁判所の確定を急速審理ですることが出来ます。あるいは相手方が異議を申し立てた場合にも急速審理で契約の解除を裁判所に確定するように要求できます。この場合にも契約破棄を言い渡された方は本審理を要求して、本審理を待つ間、仮判決の停止を請求できます。

     

  • 急速審理と弁護士
  • 上にも述べたように急速審理では必ずしも弁護士の補佐は必要とされていません。しかし、こういった法廷技術を十二分に使ってやるには、弁護士と相談してやったほうが良いでしょう。

    細かいことは習得する必要はありませんが、弁護士に相談する時に、上述くらいの知識があったほうが問題を大局的につかんで弁護士に的確な相談が出来ると思います。

    弁護士の方もお抱えの弁護士の場合は別ですが、そうでない限り、当事者ほどに問題をじっくり検討しよく理解して対処してくれることはむしろ稀です。ある程度の法廷技術をこちらも知って弁護士に的確な相談をして的確な要望を伝えられるようにすることが、弁護士とうまく付き合うコツです。

     

    ※情報は掲載時点のものです。また、あくまで一般論であり、背景の異なる個別のケースでは該当しない場合もあります。最新の情報やお客様のケースにあった情報につきましてはお問合せください。

     


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