フランスにおける契約書の濫用条項 (Des clauses abusives d'un contrat)

水道工事を頼む場合からスポーツクラブに入会する場合まで、現代では殆どの場合に契約書にサインをします。スポーツクラブなどでは、よく更衣室で起こった盗難についてはクラブには責任はないと書いてあります。こういった一方的に片方が有利になる条項を濫用条項 (des clauses abusives) と言います。

今回はこうしたフランスの濫用条項 (des clauses abusives) についてご説明します。

 

  • 概要
  • 注意する必要があるのは、この濫用条項として契約書に書かれていても書かれていないものとみなされるのは、片やビジネス、片やビジネスでない個人という場合に限られます。

    したがって、二人の個人が中古車の売買をやって片方に一方的に有利な条項があっても、それは濫用条項ということで書かれていないものとみなすとはいえません。ピストルを突きつけられて脅かされたからそんな不利な契約をした等、何か別な理由がないとその契約書は有効です。

    2009年3月18日の法で濫用条項のリストを決めました。この法で黒色リストに載っているものは、いかなる場合にも一方的に商売側が有利になると考えられ、商売側のいかなる反論も認められないものです。それに反して、灰色リストに分類されているものは、原則として濫用条項ということで、やはり契約書には書かれていないとされますが、商売側が特に自分の状況では正当化されるものであるとして、それを証明した場合にはその条項は有効になります。

    これらがどのように実際に働くかを例を持って説明しましょう。

     

    例えば、スポーツクラブの更衣室で、「盗難はクラブには責任はない」というのは、黒色リストに入っています。したがって、この条項は書かれていないとみなされますから、あなたが財布をレストランのテーブルの上に忘れて取られたというようにあなたのほうに落ち度がある場合を除いて、クラブに責任はあることになります。従ってクラブに損害賠償を求められます。クラブが払わない場合は裁判にすればクラブ側が正当な理由、あなたがロッカーの鍵をかけ忘れたとか、を裁判所に証明しない限り裁判所は賠償を認めます。

    逆の場合として、あなたが会員カードを他人に貸した場合は1000ユーロの罰金を取るとしてあるとします。そして事故やら行き違いから不愉快でそのクラブに行くことをやめて、友人にそのカードをあげたとします。それに気づいたクラブがあなたに1000ユーロの罰金を払えといってきたら、これは上記の灰色のリストに入っていますから、このクラブの特殊な性格上この条件は正当化されるとクラブ側が証明すればこの条項は有効になります。正当化できない場合はやはり、契約書に書かれていないものとみなされますから、クラブが請求してきても無視してもかまいません。

    結論として、黒色あるいは灰色リストに入っている条項は裁判所が介入しなくても契約書には書いてないものと見なしてよいということになります。つまり、無視してかまわないわけです。 ですからその条項が、あなたが何かをすることを禁止していたら、かまわずにやってもよいということになります。上の例でしたら、賠償金を請求してはいけないという禁止ですが、無視してやってもよい(賠償を請求してもよい)ということになります。 あるいは濫用条項があなたに何かをすることを要求していたら、無視してする必要はないということになります。上の例でしたら、1000ユーロの罰金を払えという、あなたに何かをすることを要求していますが、無視してする必要はないということです。

    いずれにせよ、裁判になった場合は、あなたのほうは条項が濫用であるということは証明する必要がないということになります。従って相手はその他の理由で自分を正当化して戦ってくることになります。

    条項が上記のリストにない場合は濫用であるかどうかをあなたのほうで証明しなくてはならなくなります。そこから裁判が始まることになるわけです。

    黒色リストあるいは灰色リストについては、Code de la consommation のArticleR132-1 と ArticleR132-2 に出ています。以下でその概要を説明します。

     

  • 黒色リスト
  • 黒いリストは契約を交わす人の間に大きな不均衡が生ずるような条項です。これらの条項は判事がそう判断するまでもなく自動的に無効です。

    4つのカテゴリーに分けられます。

    (1)商売側に一方的に決定権を与えるもの    

    例えば、商売側が契約期間中に消費者に契約破棄あるいは払い戻しの権利を与えずに、一方的に契約の値段や、期間や条件を変える権利を持つような契約。

    (2)相互的ではない利点を一方的に商売側に与えるもの   例えば契約期間のない契約を破棄する時に解約告知期間が消費者側には長く商売側には短いもの。

    (3)消費者側に誤解を招くような条項    

    購買者は購入に当たり販売の一般条件を読んで承認したものとする。が実際は一般条件なるものを知ることが不可能なもの。

    (4)消費者の権利を消去したり、縮小するもの    

    例えば、商売側がその義務を守らなかった場合に消費者がその賠償を求める権利を放棄するというようなもの。    

    例えば上記の例ですと、スポーツクラブで着替え所の中であった盗難についてあなたが賠償を求める権利を放棄するというような ものです。

     

  • 灰色リスト
  • 灰色リストは契約者の間の権利に異常な不均衡を作るものです。商売側に一方的な利点を与えたり、消費者側に一方的な義務を負わせるようなものです。これらの条項は無効です。 この場合には商売側が個々の場合にその条項が正当化される理由をきちんと提示できればそれは有効な条項となります。

    例えば、予約金について、あなたが契約を締結しない場合には予約金を失うが商売側には、同様の条件がないとか、契約を守らなかった場合に消費者側には罰金が科せられるが商売側にはそれがない場合などです。

    例えば上記の例ですと、クラブのカードを友人に与えた場合に1000ユーロの罰金を払えというものです。

     

  • その他
  • 上記の黒色リストあるいは灰色のリスト以外にも濫用といえる条項はあります。ただしこの場合には条項が有効かどうかは判事が判断することになります。 この場合にはあなたが条項が濫用であることを証明することが必要です。

    裁判に訴える前に、Commission des clauses abusives のサイトであなたの問題としている条項が過去に濫用と判断されたことがあるか調べるとよいでしょう。この組織はいろんな方面の契約書を調べて定期的に濫用となりそうな条項を指摘して勧告をしています。ただしこの勧告は強制力はありませんから、判事も商売側も考慮する義務を負っていません。

     

  • 具体的に問題を処理するには?
  • 具体的に問題を処理するには、まず企業の消費者サービス係りなどへ電話で、そして手紙で連絡をして合議に達するように努めます。 証拠を残しておくために手紙は書留にします。

    合議のための努力がうまくゆかない場合には、Les conciliateurs de France 等の調停組織へ頼むことを考えましょう。 それでもだめな場合には裁判にします。

     その前に、消費者団体へ相談するのは大変よいことです。彼らは過去の濫用条項等についてはよく知っていますし、もしもあなたの他にも被害者がいれば、消費者団体はあなた達を代表して会社側を訴えることが出来ます。また消費者団体の動きは商売側にとって大きなプレッシャーになります。 消費者団体の援助であなたに必要な結果が得られればそれで一件落着です。

    さもなくば裁判へ持ち込むことになります。

    この場合問題になっている金額が4000ユーロ以下の場合には juge de proximité、4000から10000ユーロの場合には Tribunal d'Instance が管轄となります。それ以上は、Tribunal de Grande Instance の管轄です。

     

    ※情報は掲載時点のものです。また、あくまで一般論であり、背景の異なる個別のケースでは該当しない場合もあります。最新の情報やお客様のケースにあった情報につきましてはお問合せください。

     


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